- 2011/10/22
- 文: 松元祐太
- 記事No: 00017
子どもと教育【1】
~アメリカの貧困と教育~
【アメリカのイメージ=お金持ち?】
アメリカと言えばどのようなイメージをお持ちでしょうか。世界一の経済大国、ニューヨークの摩天楼、ロサンゼルスのビバリーヒルズなど、「お金持ち」のイメージを持っている人が多いのではないでしょうか。
ところが、このイメージは半分正解、半分はずれといったところです。アメリカの国勢調査局がだした統計によると、2008年のアメリカの貧困率(注1*) は12.5%、貧困ライン以下の生活をする国民は約3730万人もいます。
また、「過去1年に十分なお金がないために食料を買えなかったことがあった人の割合」は、日本が4%であるのに対しアメリカは15%となっています。つまり、アメリカには豊かな人がたくさんいる一方で貧しい人も数多くいるのです。
【Teach for America 教育×貧困】
Teach for America (TFA)という名前を聞いたことがありますか?文字通り、TFAはアメリカの教育団体です。上で説明した通り、アメリカには貧困層がある程度いるのですが、彼/彼女らはある地域に集中する傾向にあります。これは、貧困な家庭に生まれた人はその貧困が固定化する傾向にあることを意味しています。つまり、貧しい親から生まれた子どもは将来も貧しいまま、ということです。
これはなぜでしょうか。様々な原因が考えられますが、一つには教育の問題があります。貧しい地域は治安も悪く、あまり優秀な先生も集まってきません。さらに多くの家庭が低所得なため、教育にかけられる支出も限られてしまいます。
そこで現れたのがTeach for America (TFA)です。TFAは、ウェンディ・コップが学生であった1989年に考案したアイデアをもとに作られた教育団体で、アメリカの低所得層が住む地域に、名だたる大学の学生たちを先生として派遣しています。
TFAは設立されてから早くも20年以上たち、指導地域ではかなりの成果を上げています。例えば、これまで教えた1万4000人以上の生徒のうち、テストで平均以上の点をとった割合を17%から94%に上げています。そして現在なんと、大学生が就職したい団体ランキングでAppleやGoogleといった優良企業を抑えて1位にランクインしています。
この団体は何が優れているのでしょうか。それは、TFAが教育問題だけでなく、同時に貧困問題にも取り組んでいるところにあります。
――貧困問題を解決するのに教育問題に取り組む?
貧困と教育は密接に結びついています。そして、貧しいと低い水準の教育しか受けられず、それが更なる貧困を招く、といったように、そこには負のループ(注2**) が存在しています。しかし、よい教育を受けた者はこの貧困の負のループから脱することができるのです。貧困のループから逃れることは自尊心を得ること――自分自身の人生に誇りを持つこと――にもつながります。
【世界の貧困×教育】
貧困と教育の問題はアメリカだけではなく、とりわけ発展途上国をはじめとして世界中に広がっています。
しかし世界中には、教育と貧困の両面から取り組んでいる団体も多くあります。次回以降、そうした活動に取り組んでいる団体をどんどん紹介していきたいと思いますので、乞うご期待下さい!
(注1*) 貧困率:国における収入の格差を表す指標。これは相対的なもので全体の所得平均の半分以下の人の割合を示す。
(注2**) ループ:原因と結果(因果関係)のつながりの循環のこと。
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