1人の子どもの1年の教育費3万円×20人
インドには貧しくて働いている子ども、働いているために学校に行くことができない子どもがたくさんいます。そこでフリー・ザ・チルドレン・ジャパン(FTCJ)はFTCネットワークに属するFTCインド(CCD)が運営する「マクタニール(Muktaneer)子どもの家」という養護施設で生活する子どもたちを支援しています。
マクタニールはカルカッタ市内から、車で約2時間のマディヤグラムというところに位置しています。この「マクタニール子どもの家」は児童労働に従事していた子どもや、家庭が貧しいために学校に通えなかったり、栄養ある食事が取れなかったり、安心して暮らせる場所がなかったりと権利が守られていない子どもを保護しています。そして、この施設で子どもたちが子ども時代を取り戻せるような暮らしを提供しています。マクタニールの中には、CCDアカデミーという小学校があり、年齢の低い子どもたちはそこで学び、比較的年齢の高い子どもたちは近くのCCDアカデミー高等学校部門で学んでいます。このCCDアカデミーでは英語教育を実践しており、幼児期のほとんどを苦しんできた子どもたちに、質の良い教育、職業訓練、アクティビティ(スポーツやアートに触れる活動)などを通して、自立のための準備期間を提供しています。
マクタニールには、2歳半~15歳までの男の子が24人います。子ども1人が1年間学ぶのに必要な教育費は約36,000円です。そこで、FTCJでは、マクタニールにいる子どもたちの生活や教育のためにかかる費用や、教師の給料などを支援していくため、日本にいるみなさんと、マクタニールで暮らす子どもたちが文通を通じて交流できる文通プログラム」を設置しました。この文通プログラムを通じて集まった参加費は、マクタニールの子どもの教育費や栄養強化のために使わせていただきます。
サイフル君は、6人家族(父・母・姉2人・兄1人)の末っ子です。1番上のお姉さんは結婚して農村の家に嫁ぎ、2番目のお姉さんは連絡が取れず誘拐されてしまったと考えられていました。真相は、ビハール州にある家に嫁ぐために夫の家族に連れて行かれ、その後ダンサーとしてお金を稼ぐ道具に利用されているのではないか、と言われています。また、お兄さんはお母さん同様に精神疾患を患っています。
お母さんは病気でも農業季節労働者として働いています。 農作業の収穫時期はとても忙しく人手が足りなくなるため、働かざるを得ないのです。
サイフル君は、「マクタニール子どもの家」に来る前、幼い時から畑仕事やヤギ飼いの仕事をして働いていました。また、サイフル君の家族全員がどんなに一生懸命働いても、家族全員分の食事が買えない時が度々あったため、サイフル君は家々を訪ねて、その日の食事をもらうために物乞いもしていました。
夏の照りつける太陽でむせるような暑さのときも、寒い冬でも、サイフル君は必ず毎朝7時半から働かなければいけませんでした。夏の炎天下で仕事をすると、サイフル君は汗をひどくかき、頭がくらくらし、疲れ果てました。でも、サイフル君には木陰で涼む時間などありませんでした。なぜなら、いつもヤギたちの動きをおっていなければいけなかったからです。雨季は、ヤギが雨に濡れるのを嫌がるし、病気にもなりやすい時期なので、毎日放牧する必要はありませんでしたが、そのかわりに、ヤギのえさとしてサイフル君が草を集めなくてはいけませんでした。雨が降ると草が滑りやすくなり、泥まみれになるので、ちょっとの時間でも働くのは大変でした。
マクタニールで生活するようになったサイフル君は、毎日の労働から解放され自由になりました。6年間の過酷な労働生活の末、子どもらしい生活を取り戻し、マクタニールでの時間をとても楽しんでいます。お母さんとお兄さんは、一緒に村に残ってマクタニール(FTCインド)から支援として受けとったヤギを飼いながら自活しています。収入が向上したからです。サイフル君の夢は映画の作り手(特に映画監督)になることです。