プレダ基金は、フィリピン・オロンガポ市にある子どものためのNGO。団体名のPREDAは、Peoples Recovery, Empowerment and Development Assistanceの略で、「人々の回復や発展の支援」という意味。この団体は、1974年、アイルランド人のシェイ・カレン神父とフィリピン人のヘルモソ夫妻によって設立され、「子どもや女性、貧困層の人々を守る」という使命を掲げて活動しています。
プレダは、大きく分けて以下の3つの事業を行っています。
1)子ども、女性、貧しい人々の権利を守るために法が正しく執行されるように働く。
2)社会の中で弱い立場にある女性や子どもを、性的虐待や搾取から守る。
3)フェアトレード(公正な取引)を奨励し、無利子での融資、技能訓練、市場への進 出機会を提供することで、生産者を支援する。
具体的には、刑務所で不当な扱いを受けている男の子たちを救出し保護したり、「プレダ・子どもの家」では性的虐待を受けた子どもたちを保護し、子どもたちがもとの家庭に戻れるようセラピーやカウンセリングを行ったりしています。また、女性や子どもたちが性的搾取を受ける大きな要因が貧困であることから、プレダはフェアトレードという方法で地域の経済的自立を支援しています。生産者の立場を尊重しながら、技術、知識の提供や、少額ローンの融資などを通して、地域の特産物であるマンゴーやその他のトロピカルフルーツの生産を支援し、市場進出につなげています。
マーリンさんは、3歳の時に父を亡くし、5歳の時にお母さんが再婚しました。最初は義理のお父さんもやさしくとても幸せな家族でした。でも、お父さんが仕事を失い、お酒におぼれ暴力を振るうようになり、ある日マーリンさんはその義父にレイプされたのです。彼女は助けを求め、お母さんにやっとの思いでそのことを話したのですが、お母さんは何度話をしても信じてくれませんでした。
マーリンさんは、「誰もわかってくれない」と家を出てストリート(路上) に行きました。そこで売春の仲介人に出会い、騙されて外国人相手に体を売る仕事をさせられるようになりました。1996年のある日、9歳のマーリンさんはボラカイ島のリゾート地に連れて行かれ、ドイツ国籍とオーストリア国籍の成人男性に買春され性的虐待を受けたのです。その後、街の市長夫人がマーリンさんのことを不審に思い、警察に通報してくれたのがきっかけで、彼女はようやく助け出されました。
彼女がプレダに救出されたのは、13歳のときでした。マーリンさんはプレダでセラピーを受け、徐々に心の傷を克服していきました。プレダから学校に通うようにもなりました。そして、フィリピンの少女が性的被害にあわないために自らの体験を話す活動家になりました。その頃、FTC創立者であるクレイグくん(当時15歳)がプレダを訪問し、マーリンさんは彼に「将来はソーシャルワーカーになりたい」と伝えました。その時の誓いを果たすべく、2009年2月から、ソーシャルワーカーとして働くためプレダに戻ってきたのです。そんなマーリンさんから日本のみんなへメッセージをいただいています。
「いつもプレダの子どもたちを応援してくれて本当にありがとうございます!みなさんのようにプレダを思ってくれる方がいるので、私も回復し、学校に行けるようになりました。そして、今は夢だったソーシャルワーカーになることができ、夢が実現しました。プレダでのケアがなければ、今の私は存在しません。きっと、教育を受けることができず、早く結婚して子どもを産んで子どもに仕事をさせていたかもしれません。でも、プレダでのセラピーを受け、教育を受け、自分の自信を取り戻し、立ち上がることができました。本当にありがとうございました。もし、みなさんに夢があるなら、ぜひ、あきらめないでください。一緒に子どもたちが幸せに暮らせる社会をつくっていきましょう。」