- 2011/5/6
- 文: 松元祐太
- 記事No: 00009
東日本大震災訪問記 第1話
【祈るように、今日も唄う ―君の為に何ができるだろう。】
【君の為に何ができるだろう】
タイトルにあげたのは、ゆずの「Hey和」の一節です。この曲は震災前の今年1月にリリースされたものです。これはもともと曲名にあるように戦争のない平和を願って唄われたものです。しかしこの曲には今回の震災にもあてはまるところが多いのではないでしょうか。
【募金する、届ける、書く、そして祈る…】
第0話までで私が岩手に行った経緯、過程などを書いてきました。それではここからはいよいよ被災地に入ってから。私が見たもの、聞いたものをお伝えしていきます。
しかしこの記事は単に現地の様子をたんたんと記していくだけではありません。そのような記事はすでにテレビや新聞などを通して繰り返し見ていらっしゃると思います。
そこで今回のテーマは、「私たちはいったい何ができるのか」。現地の方々はいまだに支援を必要としています。第1話では記事を通して、このことを考えてみましょう。
もうすでに1か月以上の月日が過ぎました。もうすでに何かしらの行動をとった方もいらっしゃるかと思います。これからご覧いただく記事は、もちろん今回の震災に遭われた方のために書いていますが、ここで書くことが今後起きうる震災にも役立つことを期待しています。
何ができるのか、まずは募金が考えられます。震災直後から駅前などで学生らを中心に募金活動を目にしました。私も岩手県の盛岡で募金をして参りました。身近にできる支援活動の代名詞のようなものといえます。
次に挙げられるのが届けることです。自衛隊やアメリカ軍など公的な組織だけでなく、今回は阪神大震災の経験を活かし多くのNPO団体などが食料や毛布などの支援物資を届けました。例えばシャプラニールでは、地震後に救援物資の配給から取り残された茨城県に入り必要な物を届けたそうです。
3つ目は書くことです。思いを胸に筆をとる。まさに今、私がしていることです。ソーシャル・メディア、ミドル・メディアの発達した今日において、多くの人に思いを伝えられるのはテレビ局、新聞の記者だけではありません。地震直後、twitter上では著名人のリツイートを利用した人探しがたくさん見受けられました。今では一人ひとりが発信者なのです。
4つ目は祈ることです。Pray for Japan。世界中の人が被災された方に対し祈りをささげてくれています。
もちろんこれ以外にもたくさん支援する方法はあるでしょう。例えばゆずの歌詞にもあるように唄うことでも被災者の支えになることができるでしょう。
【私が選んだもの。―何を届けることができるのか】
第0話後編でも記しましたが、私は上の中の2つ目、「届ける」ことを選びました。しかし届けたものは普通の物資(カイロや電池など)だけではありません。何よりも届けたかったもの、それはこのサイトでみなさんから頂戴した応援のメッセージです。
一つ強く記憶に残っていることがあります。それは山田南小学校という避難所へ訪れたときのことです。私は一人で荷物を背負って入ったため物資は限られた量しか持ち込めませんでした。物資としては、カイロ30枚、歯ブラシ50本、電池20本程度です。
勇み足で現地に入ることは控えるように言われている今、そのような軽装備では正直、不安で仕方ありませんでした。
―避難所へ持って行っても拒否されたり、忙しい中で迷惑をかけたりするの ではないか―
現に個人からの物資は受けとらない避難所もあるそうです。さらに山田南小は大規模な避難所でした。服やマスクなども大量に置かれており、私が持ってきた物資がいるとは思えません。私はおそるおそる役場の職員の方がいらっしゃる部屋をノックし、東京からきた旨伝えました。中では会議をしていました。「邪魔なのではないか」ということが頭をよぎります。まずは物資を持ってきたことを伝えると、今必要なのはシャンプーや歯磨き粉であると言われました。それは持っていないと伝えます。空気がはりつめます…
そこで私がとりだしたのが、そう、応援メッセージでした。
初めは不思議そうな表情をしていた職員の方ですが、世界中からのメッセージだと伝えた時の表情が印象的でした。そして快く受け取って頂き、「必ず町民のみなさんにお見せするように手配します」とのこと。そこで何度もおっしゃっていた「ありがとうございます」というのが今でも耳に残っています。
邪魔になるのではないかという私の予想は見事に裏切られました。感謝の言葉を頂いたのは山田南小だけではありません。今回の訪問を通して最も印象的だったのはどこに行っても「ありがとうございます」と言っていただけたことです。
【私はあなたを応援しています、を届ける】
何ができるのか、その答えの選択肢の中に「思いを届ける」ということをいれてみてはどうでしょうか。いまだに現地の人たちの傷は癒えていません。それは毎日のようにテレビの画面などを通して伝えられています。
そして思いの届け方は人それぞれだと思います。今回私は皆さまから頂戴したメッセージを紙にして渡す、という方法をとりましたが、もしかしたら被災地で唄うことによってそれを伝えることができるかもしれません。
気持ちを伝えに行くことは重要で必要な支援だということが今回よくわかりました。もちろん物資も必要とされています。しかし物だけでは人の心を満たすことはできません。現地の人たちは、「いつもそばにいる人の声」や「一家だんらんを過ごした空間」など物以上のものを失いました。そしてこれからのことを悲観し苦労しています。そんな困難により応えられるのは物ではなく言葉です。支えています、その言葉です。
―私はあなたを応援しています。 I’m with you. I will support you.―
応援の言葉を直接伝え「ありがとう」と言ってもらえた。思いが伝わった、だからこそこの言葉を頂けた。そう私は信じています。
【ありがとうを聞きに行きませんか?】
何かをしたいと考えている方へ。もしかしたら直接的な支援は迷惑になるのではないか、と危惧している方へ。ここまで書いてきたように現地の方は多くの方が寛容的であったと感じました。あなたの気持は決して迷惑でもなんでもありません。その一歩を思いきって踏み出してください。その一歩は必ずや感謝の言葉となってかえってくるでしょう。「ありがとうございます」、その言葉を直接聞きに行きませんか?
もちろん怖く、正直つらい思いもしました。ですがそれをも上回る気持ちいい経験ができたと思っていますし、それはその言葉のおかげです。ありがとう、ほんといい言葉ですよね!
【ボランティアに行こう!と思っている方へ、少しだけ伝えたいこと】
現在は多くのボランティア団体が募集を始めています。そちらに登録して現地へ行くというのが最も現実的な方法だと思います。
しかし、現地に入られる方は身の回りの世話を自身で完結させられることが求められます。例えば、現地で食料を調達できるとは思わないで下さい。売っていたとしてもそれは現地の方が、今後買うものです。トイレもできるとは思わないで下さい。現に福島の避難所では仮設トイレも水が不足しておりピンチです。
個人で行かれる方は、今、求められているのは何なのかを十分に把握する、そして必要なものを持っていく。これが重要です。必要とされているのは地域ごと、どころか避難所ごとに異なります。しかもその内容も刻々と変わるものが多いです。例えば、twitterなどで調べたら「A避難所はシャンプーが不足」と書いてあったとします。あなたはシャンプーを買いこんでいきます。ところがあなたが訪れる数分前に大量のシャンプーが届いたとします。あなたのシャンプーは受け取ってはいただけるかもしれませんが正直、不要です。情報をはじめとして周到な準備が求められます。
しかしこのようなことで躊躇している場合ではありません。現に被災者の方はあなたの支援を必要としています。これは気をつければ乗り越えられることです。迷わず思いを優先させましょう。
つづく。
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タイトルにあげたのは、ゆずの「Hey和」の一節です。この曲は震災前の今年1月にリリースされたものです。これはもともと曲名にあるように戦争のない平和を願って唄われたものです。しかしこの曲には今回の震災にもあてはまるところが多いのではないでしょうか。
【募金する、届ける、書く、そして祈る…】
第0話までで私が岩手に行った経緯、過程などを書いてきました。それではここからはいよいよ被災地に入ってから。私が見たもの、聞いたものをお伝えしていきます。
しかしこの記事は単に現地の様子をたんたんと記していくだけではありません。そのような記事はすでにテレビや新聞などを通して繰り返し見ていらっしゃると思います。
そこで今回のテーマは、「私たちはいったい何ができるのか」。現地の方々はいまだに支援を必要としています。第1話では記事を通して、このことを考えてみましょう。
もうすでに1か月以上の月日が過ぎました。もうすでに何かしらの行動をとった方もいらっしゃるかと思います。これからご覧いただく記事は、もちろん今回の震災に遭われた方のために書いていますが、ここで書くことが今後起きうる震災にも役立つことを期待しています。
何ができるのか、まずは募金が考えられます。震災直後から駅前などで学生らを中心に募金活動を目にしました。私も岩手県の盛岡で募金をして参りました。身近にできる支援活動の代名詞のようなものといえます。
次に挙げられるのが届けることです。自衛隊やアメリカ軍など公的な組織だけでなく、今回は阪神大震災の経験を活かし多くのNPO団体などが食料や毛布などの支援物資を届けました。例えばシャプラニールでは、地震後に救援物資の配給から取り残された茨城県に入り必要な物を届けたそうです。
3つ目は書くことです。思いを胸に筆をとる。まさに今、私がしていることです。ソーシャル・メディア、ミドル・メディアの発達した今日において、多くの人に思いを伝えられるのはテレビ局、新聞の記者だけではありません。地震直後、twitter上では著名人のリツイートを利用した人探しがたくさん見受けられました。今では一人ひとりが発信者なのです。
4つ目は祈ることです。Pray for Japan。世界中の人が被災された方に対し祈りをささげてくれています。
もちろんこれ以外にもたくさん支援する方法はあるでしょう。例えばゆずの歌詞にもあるように唄うことでも被災者の支えになることができるでしょう。
【私が選んだもの。―何を届けることができるのか】
第0話後編でも記しましたが、私は上の中の2つ目、「届ける」ことを選びました。しかし届けたものは普通の物資(カイロや電池など)だけではありません。何よりも届けたかったもの、それはこのサイトでみなさんから頂戴した応援のメッセージです。
一つ強く記憶に残っていることがあります。それは山田南小学校という避難所へ訪れたときのことです。私は一人で荷物を背負って入ったため物資は限られた量しか持ち込めませんでした。物資としては、カイロ30枚、歯ブラシ50本、電池20本程度です。
勇み足で現地に入ることは控えるように言われている今、そのような軽装備では正直、不安で仕方ありませんでした。
―避難所へ持って行っても拒否されたり、忙しい中で迷惑をかけたりするの ではないか―
現に個人からの物資は受けとらない避難所もあるそうです。さらに山田南小は大規模な避難所でした。服やマスクなども大量に置かれており、私が持ってきた物資がいるとは思えません。私はおそるおそる役場の職員の方がいらっしゃる部屋をノックし、東京からきた旨伝えました。中では会議をしていました。「邪魔なのではないか」ということが頭をよぎります。まずは物資を持ってきたことを伝えると、今必要なのはシャンプーや歯磨き粉であると言われました。それは持っていないと伝えます。空気がはりつめます…
そこで私がとりだしたのが、そう、応援メッセージでした。
初めは不思議そうな表情をしていた職員の方ですが、世界中からのメッセージだと伝えた時の表情が印象的でした。そして快く受け取って頂き、「必ず町民のみなさんにお見せするように手配します」とのこと。そこで何度もおっしゃっていた「ありがとうございます」というのが今でも耳に残っています。
邪魔になるのではないかという私の予想は見事に裏切られました。感謝の言葉を頂いたのは山田南小だけではありません。今回の訪問を通して最も印象的だったのはどこに行っても「ありがとうございます」と言っていただけたことです。
【私はあなたを応援しています、を届ける】
何ができるのか、その答えの選択肢の中に「思いを届ける」ということをいれてみてはどうでしょうか。いまだに現地の人たちの傷は癒えていません。それは毎日のようにテレビの画面などを通して伝えられています。
そして思いの届け方は人それぞれだと思います。今回私は皆さまから頂戴したメッセージを紙にして渡す、という方法をとりましたが、もしかしたら被災地で唄うことによってそれを伝えることができるかもしれません。
気持ちを伝えに行くことは重要で必要な支援だということが今回よくわかりました。もちろん物資も必要とされています。しかし物だけでは人の心を満たすことはできません。現地の人たちは、「いつもそばにいる人の声」や「一家だんらんを過ごした空間」など物以上のものを失いました。そしてこれからのことを悲観し苦労しています。そんな困難により応えられるのは物ではなく言葉です。支えています、その言葉です。
―私はあなたを応援しています。 I’m with you. I will support you.―
応援の言葉を直接伝え「ありがとう」と言ってもらえた。思いが伝わった、だからこそこの言葉を頂けた。そう私は信じています。
【ありがとうを聞きに行きませんか?】
何かをしたいと考えている方へ。もしかしたら直接的な支援は迷惑になるのではないか、と危惧している方へ。ここまで書いてきたように現地の方は多くの方が寛容的であったと感じました。あなたの気持は決して迷惑でもなんでもありません。その一歩を思いきって踏み出してください。その一歩は必ずや感謝の言葉となってかえってくるでしょう。「ありがとうございます」、その言葉を直接聞きに行きませんか?
もちろん怖く、正直つらい思いもしました。ですがそれをも上回る気持ちいい経験ができたと思っていますし、それはその言葉のおかげです。ありがとう、ほんといい言葉ですよね!
【ボランティアに行こう!と思っている方へ、少しだけ伝えたいこと】
現在は多くのボランティア団体が募集を始めています。そちらに登録して現地へ行くというのが最も現実的な方法だと思います。
しかし、現地に入られる方は身の回りの世話を自身で完結させられることが求められます。例えば、現地で食料を調達できるとは思わないで下さい。売っていたとしてもそれは現地の方が、今後買うものです。トイレもできるとは思わないで下さい。現に福島の避難所では仮設トイレも水が不足しておりピンチです。
個人で行かれる方は、今、求められているのは何なのかを十分に把握する、そして必要なものを持っていく。これが重要です。必要とされているのは地域ごと、どころか避難所ごとに異なります。しかもその内容も刻々と変わるものが多いです。例えば、twitterなどで調べたら「A避難所はシャンプーが不足」と書いてあったとします。あなたはシャンプーを買いこんでいきます。ところがあなたが訪れる数分前に大量のシャンプーが届いたとします。あなたのシャンプーは受け取ってはいただけるかもしれませんが正直、不要です。情報をはじめとして周到な準備が求められます。
しかしこのようなことで躊躇している場合ではありません。現に被災者の方はあなたの支援を必要としています。これは気をつければ乗り越えられることです。迷わず思いを優先させましょう。
つづく。
* ミドルメディア、ソーシャルメディアとは
テレビ、新聞などのマスメディアに対してmixiやfacebookなどのSNSやtwitterなどの新しいメディア。中東・アフリカで起こった民主化革命でも民衆の考えを広めるためのメディアとして広く利用された。厳密には異なるのだが細かい違いは割愛。
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