- 2011/11/5
- 文: 松元祐太
- 記事No: 00019
水のこれからを考えよう! ~水がビジネスになる??~
【水が飲めるって当たり前?】
私たちはこれまで未来の問題について考えてきました。例えばバイオ燃料を通して食糧やエネルギーの未来を見つめました。
そして地震を経て、エネルギー問題がより一層、今後の大きな課題になりました。
しかし今後、世界中で問題になると言われているのはその二つだけではありません。以前、ネパールの水問題でも取り上げましたが、「水」もそのひとつです。
日本には「お金を惜しげもなく大量に使う」という意味の「湯水のように使う」という諺(ことわざ)があります。「湯水」という言葉そのものが「どこにでもあり余るほどあるもの」というたとえとして用いられています。
この諺が示す通り、日本では水は豊富にあるものとして捉えられがちです。水道をひねれば飲める水が出てきます(しかもその水道水は飲まずに飲料用にはペットボトルの水を買う人も多いです)し、レストランに入ればこれまたタダで飲める水が必ず出てきます。
こうしたことが日常である日本人にとっては「水が世界の大問題!」ということにはピンとこない人が多いのではないでしょうか。
ですから、「水が飲めるって当たり前?」という質問に、多くの日本人は「当たり前!」と答えるでしょう。
【世界の中で、どこでも水道が飲めるのは日本とスイスだけ】
しかしその日本という枠の中で見ても、いったい沖縄の離島の人たちはどのようにして日々の水を確保しているのでしょうか。
いくら周りを見渡せど、海、海、海!どこにも水源となる山や川はありません。(海の水は飲むにも農業にも使えませんよね!)
また水は途上国だけに限られた問題ではありません。例えば、絶え間なく水が出ているマーライオンでおなじみのシンガポール。周囲は海に囲まれ、熱帯林の中に街があります。そこからはあまり水に困っているイメージはありません。
ですが、水の管理が国家の存亡にかかわるということで、水が貯めてある地域は国によって厳重に管理されていて、入るのが禁止されています。
気軽に水(とりわけ水道水)を飲むことができるのは日本とスイスだけです。ヨーロッパの一部の国々では水道が飲めるところがありますが、それもその国の限られた地域だけです。
(スイス、ジュネーヴのジェ・ドウ)
このように水は極めて重要な問題です。ネパールのようなことはけっして世界の限られた一部ではないのです。
今回はその将来問題視されている水がどのようにして、私たちの元まで安定して届けられるべきなのか(供給されるべきなのか)ということについて考えてみましょう。
【水はビジネスになる??】
一つ目は水の供給をビジネスとして拡張していくという方法です。
今、水がビジネスとなっています。つまり、そうした水に困っているところを相手にお金を稼ぐことがチャンスだと言われているのです。
例えば、中国では水道を町に敷設するための工事や管理をする会社が競合しています。現在、大きな町が集まる沿岸部では「水メジャー」とよばれるヨーロッパの企業が受注して水道事業の開拓を進めています。
こうした企業が水問題に入ってくることで、迅速かつ効率的に水道の敷設や管理が進んでいきます。
【基本的人権としての水】
もちろん水というのは人が生きていく上で欠かせないものです。つまり、どんな理由があろうとも誰一人としてその供給から漏れてはいけません。つまり水を求めることは基本的人権の一つだ、という考えがあります。
そこで、企業にだけ委ねていてはもとがとれないところ、即ち水道代を払えないような貧しい地域には水が供給されない可能性があります。これは上の基本的人権に反するのではないか、こんな指摘もされています。
それならば今の日本と同じく公共機関がその役割を担えばいいのでは?という声が聞こえてきそうです。しかし公共機関が水道の整備を続けていくことの危うさも指摘されています。なぜならば公共機関は水道代を値上げしにくいからです。
今、日本の水道管は老朽化が進んでいます。
加えてこれを付け替えるにはおよそ20年はかかると言われています。
想像するだけでも気が遠くなるような事業ですが、いち早く付け替えることが求められています。
さらに費用も問題です。もし今徴収している水道料金を全部付け替えるための工事費にまわしたとします。
そうすることでようやく、20年かかって日本全国の付け替え費用が賄えるといわれています。
ところが、そうすると工事期間中(20年)は水道関係で働いている人にどうやって給料を払えばよいのでしょうか。そう考えると水道代を値上げするしかない、と考えられますが、公共料金を値上げするのは貧しい人など多くの人が関係するためなかなか大変なのです。
【誰が水問題に取り組むのか】
この問題の解決にあたって、企業と公共機関のどちらがその役割を担うのでしょう。もちろんそれ以外の第三者、というものにも期待はあります。
将来的には100兆円以上のお金が水関係で生まれると言われています。
しかし裏返せば、それだけ必要としている人がいる(ニーズがある)ということではないでしょうか。
ひょっとしたら今後「湯水のように使う」という言葉の意味は変わってくるのかもしれません。水をはじめとするあらゆる資源は、無尽蔵には存在しないことを改めて考えさせられます。
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